yamayama_photo日記

心に残るよしなしごとを写真とともに書きとめる草ログ

映画「水と風と生きものと」

科学者で「JT生命誌研究館」館長を勤める中村桂子さんを追った映画をみた。

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生命誌とは人間も含めてさまざまな生きものたちの「生きている」様子を見つめ、そこから「どう生きるか」を探す、生命科学から進化した新しい知だそうだ。JT生命誌研究館では研究、展示発表、イベントなどが行われる大阪府高槻にある研究・展示施設だ。

いまの時代に必要なことを、科学者の視点から現代社会に警鐘をならし、いろいろな知とつながって、生きることの大切さを提唱していて、いたるところで賛同出来た。

 このドキュメンタリーの中で「生きていること」「わたしたち人間もいきもののひとつ」を大切に考える社会を求め、日本中の同じような考えを持つ研究者、アーティストや学校、編集者、冒険家などを訪ねて語り合い、多方面から検証し、中村さんの考えの幅を広げている。

 

東日本大震災を体験し、日本の人々が豊かで脅威に満ちた自然のほんとうの姿、人間が人間の都合で自然をおさめようとするのではなく、自然のなかで生きるということを大切にすることに改めて気付き、科学が進歩したなかでの人間がどうあるべきか考えを改めるという兆しが見えたように感じたが、その怖さを知ったうえで更に間違った方向へ日本は向っていると中村さんは危惧していた。

そんななかでどうしたら全ての生きものが自然の恩恵を受けた心豊かな生活をおくれるようになるか、現状を変えていけるか、生命科学者の目を通して考え訴えている。

 

多様な生命がどのように生まれ、つながって生きて来たかということを探って行き着いたのは、地球上のすべての生きものたちは、38億年前の海に存在した細胞を祖先としDNA(ゲノム)としてそれぞれの体内にその38億年の歴史を持って生まれた稀な大切ないのちであるということだった。

38億年という歴史、時間を無駄には出来ないが、科学が進歩した時代に生き、自然やいのちをつなげることがいつの間にか自分の身体から遠く実感が持てなくなっている現代の人間にどのように響くのだろうか。

「生きものたちの大切さ」というあたりまえのことを、真に理解すること、体感することは実は難しいだろう。出来るだけ子どものうちに体験し、興味を持ち、身体化して持続してもらいたい。

 

人間も生きもので、自然の一部であるということ、これは人間が変えることは出来ない。とすれば、自然を人間がかえることも出来ないはずだ。

確かに自然の摂理が解明され、技術が発展し物理的には過ごしやすくなったけれど、日常の営みの中で工夫され自然に変わっていくことと、人間のエゴで自然の摂理に抗い無理やりに変えることは違うのだと思う。

科学や技術が日々進歩する中で、早くしないと何かが間に合わないのではないかと焦る気持ちがあるが、時間をかけないと人の心を変えることは出来ないと思う気持ちも同時にある。

 

「水と風と生きものと」 オフィシャルサイト

tsumugu.brh.co.jp